
「ノーメンテ」はNGではない…けどもったいない!

一昔前よりは少なくなりましたが、今でも巷に散見される「ノーメンテナンス」や「メンテナンスフリー」といったコーティングサービスの説明・広告…。コーティングが広まった今でもこのイメージは根強く、弊社へも「コーティングしたら洗車しなくてイイんでしょ?」といったお問い合わせがあります。
現時点では、どんなコーティング剤・施工法でも「手間が一切かからずキレイが続く」は実現できない、つまり「誤ったイメージ」というのがkiramekiの見解。それでも、実は「ノーメンテは絶対NG」とも考えていません。何をもってコーティングを価値とするか、改めて今日のコーティングの持続イメージとともに解説します。
いまだに誤解生む広告・セールストーク
いまだによくあるメンテフリーの誤解は、主にコーティングの商品・サービスを提供する際の広告やパッケージ、セールストークに起因するところが大きいと考えています。
用品店の洗車コーナーの商品棚や通販サイトのカーケア用品ジャンルを覗くと、ずらっと目に入る「◯年持続」の文字。また、専門店ではほぼないかと思いますが、ディーラーや中古車販売店などでコーティングに詳しくないセールスが説明する際に「洗車しなくても良くなる」「◯年保証」といった類のトークをしてしまうこともあるそう。
実際、弊社に来店したカーオーナーや取引のある車両販売店からは、そうセールスされたといった話や、「お客さんにそう説明してクレームになっちゃいました」といったことがいまなお聞こえてきます。


メーカーとしても汚れは保証対象外
でも実際には、ほとんどのコーティング商品・サービスで、被膜持続・保証に関して注意書き(エクスキューズ=弁明ともとれるような)が記載されています。
コーティング施工サービスの場合、「◯年保証」と同時に「年1回の点検」を条件にしていることがほぼ全て。また、保証外となる事柄についても、樹脂素材面への施工や、メーカー指定外のメンテナンス剤やコンパウンドなどの使用、樹液や鳥糞、鉄粉、虫の死骸といった外的要素による汚れ付着などが記載されている場合も。
つまり、コーティングメーカーとしては、耐候試験などを通じて“提示している年数通りに被膜が持続する”ことを検証している…。ただ同時に、年1回のメンテナンスをはじめ、各種汚れの付着など“通常のカーライフではおよそ避けられないような事柄”も含め、「保証外」を指定することで成り立っている、ということです。
この構造は、まだガラスコーティングが本格普及する前の時点で1つの裁判でも明かされています。その昔、ワックスメーカーがコーティングメーカーの「5年間新車の輝きが続き、ワックスが不要」といった内容の広告に対し、「虚偽の表示で消費者に優良誤認を与えた」として2002年に訴訟を起こしたこともありました。04年の一審ではその主張が概ね認められたのですが、翌05年の控訴審では一転、原告主張を退ける判決(=広告が虚偽とはいえない)となりました。
※詳細を知りたい方は「不正競争防止法判例データベース(運営:アスタミューゼ)」をご覧ください。一審/二審
この訴訟はフッ素樹脂系コーティングが焦点でしたが、ガラスコーティングやセラミックコーティングなど液剤の性能が進化した今でも、この原理は大きくは変わっていないと考えています。
なので、現実的にはメーカー側も「そもそも実は完全なメンテフリーはほぼ謳っていない」というのが実情で、商品・サービスのセールスの現場でコミュニケーションの行き違いが起こっているというのが「コーティングに関する誤解」の大きな土台だと見ています。

もう1つの誤解要因 キレイの基準は主観
このカーコーティングの大前提の上に、さらに誤解を招くのが、そもそも「キレイかどうかが人の主観によって異なる」こと。「コーティングの耐久性」は、前述の被膜が実際に維持されているかどうか、とは別の基準で、施工したカーオーナーが実際に期待している効果かどうか、という点も大切です。
前述の訴訟判決でも、「『新車の輝き』が持続しているかどうかということ自体が、多分に見る者の主観によるところが大きく、ある程度の幅を持つもの」と言及されていました。
例えば「コーティングに撥水性を期待している人」にとっては、いくら被膜が残っているとはいえ水を弾かなくなったら「コーティング効果がなくなった」と思うかもしれません。
逆に、「そこそこの状態でキレイと思える人」であれば、コーティングの防汚性が働いて水洗い(水を流すだけ)で満足することもあるでしょう。むしろそういった人にとっては「コーティング施工後は水洗いでOK」「雨で洗車」といった類のサービス説明もあながち嘘とは言えないものになります。
そのため、「手入れが本当に手間、忙しい」といった方や、「そこそこの状態でキレイと思える」といった方は、最初だけコーティング施工をしてノーメンテで過ごすというのも、実は1つのカーライフの在り方で、絶対NGといえるものではないのかなと考える次第です。
そもそも「クルマがキレイではない」からといって、ヘッドライトの劣化による光量不足など一部を除き、走行機能に影響を及ぼしたり保安基準の逸脱に繋がったりということもほぼありません。
でも丁寧なケアはしっかり差が出る!
では、「施工後メンテは最低限年1回すればいいの?」「マメに洗車とかしてもあまり意味ないの?」といった疑問も…。
これはショップやメーカーごとに様々な見解・主張がありますが、「クルマを美しく輝かせること」を生業とする弊社では、「それを価値と感じてくださるカーオーナー」にプロとして“できる限り”を提供するというスタンス。カーオーナー全員がコーティングや施工後のまめなケアをすべき、とは考えていません。
でも、ショップでの施工だけでなく、その後カーオーナー自身で丁寧にケアをすればする程、しっかり「キレイな愛車」として返ってきます。
「キレイ」の基準には主観要素が多く、数値指標化しづらいのであくまで概念的ですが、以下がクルマのキレイと経年のイメージ。

もちろん、元の塗装状態をはじめ、使用頻度、街乗り・高速といった走行の仕方、青空・カーポート・屋内といった保管環境、ケア・洗車の仕方などにより一台ずつ細かな状況は異なります。
ですが一般的な傾向として、コーティング施工車でも日頃のケアをしない場合、キレイは徐々に損なわれていきます。日々接していると、その汚損度合いがわかりにくいですが、目につきにくい汚れは徐々に蓄積する一方。実際、弊社でコーティングを施工したクルマが1年後にメンテナンスで戻ってきた際、入庫時点でおおよそどのようにセルフケアされていたのかは一目でわかり、日々丁寧にケアしているクルマと比べると大きな差が生じています。
一方、マメにケアを継続した場合、一般的な洗車環境ではプロ仕上げの状態から徐々に汚損は進むものの、ノーメンテやコーティングを施工しない場合と比べると“高いレベルのキレイ”を維持でき、1年メンテでは最大限に復元することもできます。そして何より、キレイ度が高い状態を長く楽しめるのが最大の魅力でしょう。一段とキレイ度が高い愛車とのカーライフは、愛車への想いが強い人程、大きな満足感に繋がるのではないでしょうか。
特に、弊社も含めわざわざ専門ショップを探してコーティングを依頼するカーオーナーは、一般的に愛車への想い・熱量が高いハズ。せっかく高い熱量と費用をかけて施工したのであれば、施工直後だけでなく最大限のキレイを長く・目いっぱい体験していただきたい。kiramekiではこうした考えのもと、決して「コーティング施工後のノーメンテは無価値・NG」とはいいませんが、施工後は月1回のケアを提案しています。
次回コラムでは、施工後ケアについて解説します。
プロが見る最新カーケア
コーティング専門店のプロの目線で、愛車をキレイにする・美観を維持するためのカーケアの最新動向・お役立ち情報を発信。愛車の輝きをいつまでも…。そう願うカーオーナー様はぜひ一度ご一読ください!
北山友幸
業界の名店カービューティーマックスで修行の後、2013年に独立して自分のショップを構えたプロディテイラー。業務歴はベテランだが業界では若手。北九州出身の洗車&SUV好き。
その他の記事
OTHER POST-
これで十分! コーティング施工車の日々のケア方法
推奨は月1回〜。一般的な洗車でOK ベースとして推奨しているのは、一般的な「手洗い洗車」。ボディに水をかけた後、泡立てたカーシャンプーとスポンジで汚れを落とし、クロスで拭き上げると...
DAY 2025.03.02CATEGORIES カーコーティング, 洗車 -
「ノーメンテ」はNGではない…けどもったいない!
いまだに誤解生む広告・セールストーク いまだによくあるメンテフリーの誤解は、主にコーティングの商品・サービスを提供する際の広告やパッケージ、セールストークに起因するところが大きいと...
DAY 2025.02.24CATEGORIES カーコーティング, 洗車 -
第3の選択肢も出てきた最新「カーラッピング」事情
大きく3タイプに別れるラッピング そもそもよく一言で「ラッピング」といいますが、業界内では貼るフィルムの材料により3タイプに大別され、それぞれに機能や貼り方も異なります。 1:カー...
DAY 2024.11.30CATEGORIES プロテクションラッピング -
ガラス? セラミック? 今のコーティング事情
結論! 効果や定義として「明確な差」はない 現在、弊社では「セラミックコーティング」と「ガラスコーティング」の両製品をサービスにラインナップしています。 GTECHNIQ(ジーテク...
DAY 2024.10.16CATEGORIES カーコーティング