プロテクションにも欠点はある?
最近、施工専門店が増えてきてインターネットでも情報が増えてきたペイントプロテクションフィルム(PPF)。ディーラー店頭で案内されたり、施工店でのキャンペーン価格などを目にしたりで検討するカーオーナーも増えているのではないでしょうか。
そんな注目高まるPPFですが、万能・完全無欠なカーケアではなく、よく知らないで施工するとカーオーナーのスタイルや嗜好によっては「こんなハズでは」ということも。kiramekiでも施工を承っていますが、カーケアのプロだからこそ施工前に知っておいていただきたい注意点4点をご紹介します。
それぞれ解消する術・対応方法もありますので、ご検討の際は合わせてチェックしてみてください。
PPFの注意点1:美しさを損なうリスク!
プロディテイラーの視点で一番気になるのが、この「キレイじゃなくなる可能性がある」ことです。プロテクションフィルム施工車特有の美観汚損としては主に以下のようなものがあります。
フィルム断面の汚れの蓄積
特にホワイト系のボディカラーの施工車で目立ってしまう縁の汚れ。高い保護性能を発揮するフィルムの厚い断面に経年で汚れが溜まり、黒ずみができてしまいます。
プロテクションフィルムの施工方法として、パーツ端でフィルムを巻き込んで施工すればこのフィルム縁が目につかなくなるので汚れが気になることもありません。それでも、複雑な形状の部位や広い面積のパーツではフィルムを継ぎ合わせをせざるを得ない場合もあり、その継ぎ合わせの処理が粗いとそこに黒ずみが発生してしまうこともあります。
フィルム表面の水シミ
疎水性だったり撥水性だったりと、メーカーによって様々なプロテクションフィルムの表面。このトップコートは、フィルム表面への汚れ付着を抑える目的でフィルムメーカー各社の工夫が凝らされている部分でもあります。
ただ、長年コーティングのプロとして施工後の汚れ付着もウォッチしてきた立場からすると、コーティング被膜に比べてフィルム表面は水シミ(ウォータースポットやイオンデポジットともいわれる)が発生・固着しやすい傾向にあると捉えています。そして発生後、研磨などで除去できない場合が多いのもフィルムの注意点の1つでしょう。
水シミの発生・固着は、黒ずみと同様、施工後の環境による部分も多いので、例えば屋外保管の場合は「水濡れを放置しない」や「こまめに洗車・手入れをする」などのケアをすることで防げる場合も。また、PPF専用コーティングを活用するのも一手です。
フィルムの黄変(黄ばみ)
プロテクションフィルムの基材はTPU(熱可塑性ポリウレタン)というプラスチックの1種。身近なところではスマホケースなどでも使用されている素材なのですが、スマホケース同様、紫外線(UV)によって黄ばんでしまうのです。
近年はプロテクションフィルム自体がキレイになり、トップコートの進化などによりこの紫外線(UV)への耐候性も高まっているようで、昔に比べると黄ばみが生じるまでの時間は長くなり、黄ばみの程度も軽度になってきました。ですが、この黄ばみは構造的な劣化によるもので、汚れではないので一度生じると洗ったりなどでは戻ることはありません。なので、長く乗り続ける予定のカーオーナーは「プロテクションフィルムは経年劣化するもの」と思っておきましょう。
なお、プロテクションフィルムの本懐である保護性能も、このTPU素材が持つ弾力性によるもの。これも紫外線などで弾力性が失われていくそうなので、見た目だけでなく保護性能の面も経年とともに劣化していくことは押さえておいた方が良さそうです。
施工で生じるゴミ噛や糊ズレ、浮きなど
そもそも透明なプロテクションフィルムをキレイに貼ること自体が実はとても高い技術を要する作業です。空気中の不純物が貼り付け面に混入してしまうゴミ噛、フィルムの位置調整などで接着層に負荷が生じて発生してしまう糊ズレ(筋や円状の跡)、施工後に少し時間が経った後に接着が負けて出てきてしまう浮きや剥がれ…。プロ施工者でも、これらの品質トラブルと常に闘いながら作業しており、フィルムの特性上やむを得ず一概に施工ミスとは断定できないものも。
ただ、発生してしまったモノは見た目を損なうことには変わりなく自然に消えることもないので、一度目についてしまうとついつい気になってしまうものです。施工時の作業や環境、施工後の確認不足などに起因するものも少なくないので、設備や技量の整った良質な施工ショップを探すのがコレを避ける近道。kiramekiでは、施工実績豊富な協力パートナーと共同でプロテクションフィルム施工サービスをご提供しています。
PPFの注意点2:実質的コスパには期待しない方が吉!
残念ながら現在の日本国内では、ペイントプロテクションフィルム(PPF)の施工は海外と比べると割高サービスと言わざるを得ない側面もあります。
1つは単純に施工価格が高いこと。これは物価水準が高いアメリカなどと比べても高いそうで、流通するプロテクションフィルムの多くが輸入品で輸送コストがかかっていること、施工者・ショップが少ないこと、顧客の求める仕上がり品質が厳しく作業時間がかかることなどなどいくつかの要因があるそうです。
2つ目は、海外に比べて道路環境が整っていること。道路自体もその周辺環境も比較的整備された日本環境では、プロテクションフィルムが叶える飛び石保護の恩恵を享受する可能性がそもそも高くないのです。
そして3つ目は、塗装面保護による実質的な経済的価値がそこまで高くないことです。万が一飛び石傷を受けても、多くのクルマではプロテクションフィルム施工よりも安価に直すことができますし、下取り時に良好な美観による査定の上乗せ額が施工価格を上回ることも稀でしょう。
この高い施工費と実質的なリターンの低さから、提供するプロの目からみても「実質的に割高なサービス」というのは正直にお話しておきたいところ。「下取り時に有利!」や「飛び石傷やひっかき傷などへの保険として!」といった売り手側の宣伝文句(実質的な合理性)に期待してしまうと、現実とのギャップにショックを受けることになる場合もあるかもしれません。
とはいえ、車両の美しさを守るという点でいうと、屋内ガレージで保管させておく場合を除き、走らせる上では最上の保護術であるのも事実なので、とにかく「塗装を守れる」という安心感に価値を見出せるカーオーナーには間違いなくオススメです。
PPFの注意点3:納期がやや長め(店次第!)
「施工の作業時間」と「施工してもらうまでの予約期間」が長めな傾向にあるのも注意しておきたいポイントです。
作業時間は、ショップにもよるもののフロントフルで1週間、フル施工で2週間程が目安(kiramekiの場合)。コーティングとのセット施工になると、さらに作業日数が追加でかかってしまいます。弊社に限らずコーティングの場合、塗装状態・必要な研磨工程にも異なりますが、上記日数より短めでご納車できるケースが多いでしょう。
また予約期間もコーティングに比べて長い傾向にあります。これはペイントプロテクションフィルム(PPF)がコーティングに比べて最近広まり始めたこともあって施工ショップがあまり多くないことも一因で、中には「予約◯ヶ月待ち」なんて専門ショップも。せっかく手元に新車が届いても、施工までに間に飛び石を受けてしまっては補修費用がかさんでしまいます。
なので、プロテクションフィルム施工をご検討の場合は、納車予定に合わせて早めにショップに相談してみるのが◎。施工期間中は代車を借りられるショップもあるので、必要な方はそれも合わせてお店選び・ご検討してみてください。
弊社でも代車お貸出や先々の予約受付は承っております!
PPFの注意点4:塗装保護だけど塗装を傷めるリスク
ペイントプロテクションフィルム(PPF)はその名の通り「塗装保護膜」。ですが、保護対象の塗装を傷めてしまう可能性もあります。特に大きなリスクが「1:接着剤による剥離時のダメージ」と「2:施工時の傷等の混入」です。
1:接着剤によるダメージ
プロテクションフィルムは再剥離可能な専用設計の接着剤で塗装面に貼り付けますが、この接着剤に塗装が負け、塗装が剥がれてしまうリスクがあります。
特に注意が必要なのが旧車や低年式車、塗装状態の良くないクルマ。貼る作業時は問題なくても、貼って経年後に剥がす際に接着剤が固着してしまい塗膜を傷めてしまうケースも。新車・高年式車でもこのリスクはゼロではなく、またヘッドライトに貼り付けた場合は塗装ではなく表面ハードコートを剥がしてしまう恐れもあります。
この接着剤による剥離リスクは、現時点ではどのメーカーのフィルム、どの施工者・貼り方でも完全に防げるわけではなく、依頼するカーオーナー側がリスクとして押さえておきたいポイント。
その上で、施工ショップ・施工者によっては過去の実績から塗装状態やメーカー・車種に応じた剥離リスクを一定程度把握しています。なので、愛車の塗装面を事前にそうした施工者に確認・診断してもらうとより安心して施工をお願いできるでしょう。
2:施工時の傷混入
もう1つの大きなリスクが、施工作業に伴う損傷です。本来、プロショップの作業として生じてはいけない損傷ですが、プロテクションフィルム施工は歴史が浅く施工ノウハウが業界的にも確立しきっていないことや、免許・資格に基づく作業ではないことなどもあり、実際には「プロショップで貼ってもらったらカッター傷が入っていた」なんてことも…。
さらにカーオーナーにとって悲惨なのが、万が一その「施工による損傷」に直面しても、ショップが瑕疵と認めてくれないことも少なからずあることです。愛車が傷ついた悲しみに加えてストレスの溜まる不毛なやりとり…。残念ながらこれが起こり得てしまうのが実情なのです(一部施工に伴う損傷はコーティングにおいても同様)。
このリスクは、前述の「施工による美観汚損」と同じくショップ選び次第。プロテクションフィルムにしてもコーティングにしても、品質の良し悪しを一目で判別するような「店選び基準」はないので、過去の実績など情報を集めつつ、実際に足を運んだりお店に直接相談してみることを推奨します。
心持ちで変わる満足感
ここまでプロテクションフィルム施工にあたっての注意点(リスク、デメリット)を説明してきました。ただ、飛び石・擦り傷などの物理的な損傷からボディを守る力は、確かにどんなコーティングでもワックスでも叶えられない魅力です。リスク・デメリットを事前に認識した上で楽しめれば、他のカーケアでは得られない安心感・満足感が得られます。
ちなみに近年はコーティングでも「耐擦傷性能」を謳う商品が出てきていますが、理屈(物理的な厚み)としても実感としても、耐擦傷性は逆立ちしてもプロテクションフィルムには敵いません。
直後のキレイさやその後の汚れづらさ、撥水、傷への保護力、コスパなどなど、何を重視するかで最適なサービスが異なるのがカーディテイリングの醍醐味でもありますので、お悩みの方はまずは気軽にプロショップにご相談してみてはいかがでしょうか。
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コーティング専門店のプロの目線で、愛車をキレイにする・美観を維持するためのカーケアの最新動向・お役立ち情報を発信。愛車の輝きをいつまでも…。そう願うカーオーナー様はぜひ一度ご一読ください!
北山友幸
業界の名店カービューティーマックスで修行の後、2013年に独立して自分のショップを構えたプロディテイラー。業務歴はベテランだが業界では若手。北九州出身の洗車&SUV好き。
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